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動画を作るのはとても大変だった

「恋ダンス」ビデオ

友人の結婚式の余興として、今流行りの「恋ダンス」のビデオを作りました。



完成から既に2ヶ月が過ぎようとしていますが、

この機会にいろいろと思ったこととかをまとめていこうと思います。

例によってとても長いです。


機材・役に立ったもの

メインカメラ(デジタル一眼レフ

買ったのは2014年の誕生日だから、大体2年くらいの相棒。

撮った写真の枚数は6万枚くらい、1.3TB。



いつか書いたけれども、センサに汚れがつきやすい製品らしい。

問題になったD600から改善したとはいえ、そもそもの機構がね。

でもとても頑張ってくれている。また掃除しないとな


動画能力はあんまり高くないけど、720pで60fpsのMP4が出せるのでまあよし。


キャノンの最近の一眼レフは、デュアルピクセルCMOS AFという機構があって、

動画撮影のライブビュー時でもフォーカスがスムーズで速かったりする。


動画はそんなに撮らないから、ノロノロの旧式コントラストAFで良いんだけどね。

まあこれは下の方で書こうかな。



加えて、この子との思い出とか感謝を述べだすと1記事書けるのでこれくらいで

サブカメラ(ビデオカメラ)

主にメイキング用。

餅は餅屋ではないけれども、やっぱり動画はハンディカムが撮りやすい。

画質に関しては、一眼レフのセンサーにはかなわないけれども



レンズ


この前買った24-70/2.8Eが大活躍した。


ビネッティング、ディストーションも含めて一つの絵になっている一眼レフでは

トリミングをあまりしたくないので、やはりズームレンズが有利。



広角めで寄る、望遠めで離れる、といった画角の使い分けもできるのでとても助かる。

それでいて開放f/2.8は、暗所撮影で露光を稼ぎたいときにとても助かる。


結婚式でも大活躍しているけれども、この動画ができたのはこのレンズのおかげである。



広角ズームも一部使った


三脚


携帯性を重視した、けれども安定感のあることで重宝していたベルボンのウルトレックシリーズに、

最近発売された1ストップのビデオ雲台をつけて使った。

今買うなら、セットになっているタイプもある(UT-55)



荷物が多くなりがちなので、コンパクトに収まるUTシリーズは非常に助かる。

一点、雲台が自由雲台で動画撮影には向かなかったんだけど、

対応のビデオ雲台が出たので敵なしになった。


ちなみにこれ、伸ばす際には脚をねじってロック/解除するんだけど、

ねじり方、というか持つ位置が悪くて脚が根本から抜けてしまった。
(接着剤で固定している部分が剥がれてしまった)

300番の紙ヤスリで削って、接着剤で固定して一応復活した。

セメダイン 超多用途 接着剤 スーパーX クリア P20ml AX-038

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色について


色、とても難しい。

映像の出来栄えを左右するのは「色」であるような気がしている。


それに気をつけていればそれっぽい映像になるし、

気をつけないと(撮ったまま出した素材を使っていると)それなりの動画になってしまう。



幸い、Adobe Premiere ProにはLumentriカラー補正というのがあって、

普段写真で多用しているLightroomと同じ感覚で、色調補正ができる。


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微妙な違いだけど、結構変わるでしょ。




ただ、RAW画像の現像とは違って、H.264圧縮された動画を

画像処理しているので、補正の幅は(思っているより)狭い。

変更を大きくしすぎると、破綻して画面のどこかが不自然な色合いになってしまう。



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WBがおかしいまま撮ってしまったのを力づくで補正した図。



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力づくの跡。

色温度を鬼下げして、死んだコントラストと彩度を爆上げする。
良い子は真似してはいけません笑


色をおかしくしない、そのために

カメラ側のホワイトバランスや露光で、画像処理しやすい色合いにしておくことが大事。


いや、当たり前のことなんだけど。

「映像が撮れていれば良い」とか「後から何とかする」とか甘えた考えは捨てて、

撮影の時から、生でも使えるレベルの映像を素材として用意しておかなければ、

と実感した今回でした。


カメラにおいては、映像の場合も情報は

センサー → [カメラ側プロセッサで圧縮] → H.264 → [PCで編集] →完成素材

のように変換されていくので、メインの補正は

センサーからの生情報からH.264に圧縮する際の、カメラ側プロセッサの画像処理で

行ってしまったほうが情報の劣化は少ない。


PCでの編集は本当に最後の微調整、味付け程度にするべき



そこで、PC側で、カレーをシチューにしようとか、

焼き魚を煮魚にしようとか変更しようとすると、破綻してしまう。



露光・ホワイトバランスのカメラ側のオート設定は、

理想的な環境(自然な太陽光があって、余計な影も無くて、変な色も存在しない状況)であれば

確かに適切に機能してくれるし、意外とそういう場面は多い。



ただ、少し暗かったり、照明の特性が少し違ったり、そういうときは、

自分の目とライブビューで露光と色合いを確認して、

できるだけフラットかつ不自然でないものに合わせておかないとなって感じです。



企画の大切さ

マジで今回、これに尽きる。


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企画ノートの1ページ目。イントロは一番最初に決まっていた。


その場の思いつきでなんとかなるほど、規模は小さくなかった。

作りたいものを明確に頭に浮かべて、人を集めて、カメラを回さないと、

ちゃんとしたものは作れないなと、本当に実感しました。

コンテが先。素材はあと。


だから、自分が必死に撮影する傍らで、メイキング用にということで、

ビデオを渡して適当に撮ってもらっていたんだけど、

ちゃんと使える映像を残しておいてくれた人にはとても感謝してる。

良い映像は、撮ろうと思わないと撮れない中でやってもらったからね。

余談

今回、時間がたくさんあったわけでもないので、踊りというか演出を決めつつ、

決まったところは配役を決めつつ、配役が決まったら日程を決めて、

残った部分の演出を決めつつ、という感じの自転車操業だったので、

最後のPPAPネタを詰め込んだのが完成予定日の前々日とかだっけな。


ラスサビは、これまでに思いついたネタのしわ寄せを受けた部分で、

やりたいことはたくさんあるが尺が足りないので、
(全体的にそうだった。沢山のアイディアが思いついては消えていった)

色々試した結果として、渦巻き切り替えからのPPAPに落ち着いた。

最後のババババってのも、自然な流れで思いついたかな。PVのオマージュかな。


オマージュの話をすると、2BのギターもPVのオマージュ、

YouTubeの動画に見せるってのも昔の卒業ビデオと同じ、

イントロとアウトロのカメラキャップは、むかし東京事変がトーク映像でやってたんだよね。

探せば見つかるかも。


あと、構成ノートを書いてるのはこの万年筆です。マジでどうでもいい情報

正確には細軟(SF)、インクはかの有名な色彩雫の月夜。


余談終わり

ピント・フォーカシング

ニコンの動画機能はあくまでオマケなので、

動画撮影時ライブビューでのAF、特に追尾AF(AF-F:常時AFサーボ)は

遅いし追尾も適当だしで、信頼してはいけない。

コントラストAFで合わせていても、信頼してはいけない。


そのせいで(もちろん、確認を怠った自分のせいだけど)いくつか

ピントが合ってないシーンがじつは有ったりします。



教訓として、ピントは必ずライブビューでMFで合わせましょう。

動いているものを撮りたいのであれば、一眼レフのレンズでMFを上手にするか、

キヤノンの一眼レフを買いましょう。


こんな感じです。


また余談

オートフォーカス時において、純粋なレンズのフォーカシングの駆動速度は

レンズに内蔵されているアクチュエータの性能で決まると思うのですが、
(フォーカシング群の重さも関係あるけど。本当は)

AF開始から合焦までに掛かる時間はそれとはまた別問題で、

車を運転して目的地にたどり着くように、実際にレンズを制御してピントを合わせるのは、

カメラ内でのアルゴリズムに拠るところが大きい。


キヤノンのAFは早いが、ニコンの方が正確かも、みたいに言われたりするのは

そういうところが影響しているのだと思う。



ライブビュー時のAFで使われているコントラスト方式は、

画像処理で「ピントの合ってる度」を計算していて、一定の範囲で前後を探して、

一番それが大きくなる所を、最終的にピントが合っているとしている。

ただこの方式はトライ&エラーを繰り返すので、比較的遅いと言われている。



ただ最近のミラーレスとか、上で書いたキヤノンの一眼レフではそれに加えて、

センサ上で、「今いるピント位置から前後どちらに」「どれくらいピントがずれているか」を

計算できるようになってきている。

いわゆる像面位相差とか、デュアルピクセルCMOSとかいうやつ。


これは像面に光を当てている、つまりライブビューの動画撮影状態でも、

位相差AFのようなことができるので、速くてスムーズだし正確。



ただ、一眼レフのスチル(静止画)では絶対に必要になることのないAFセンサをわざわざ、

CMOSセンサ上に置く必要は、無いと思うけれどもね。個人的には。

YouTuberが増えている現在、トレンドはそちらに移ってきているような気がするけれど。

だってこれまでのライブビューでは考えられないくらいAFがスムーズで速いからね。



AFはここが詳しい

デジカメ「超」基礎解説:「コントラスト」「位相差」2つのAFを理解する - ITmedia LifeStyle
http://camera.itmedia.co.jp/dc/articles/1009/14/news026.html


余談終わり

フリッカー

フリッカーって、後からの編集で消すのが難しいんですね。

全然知らなかった。


ってか発生原理もちゃんとは考えたことなかった。


一眼レフ動画であれば、同じ60fpsでも露光時間を1/100とかにすれば完全に消える。

でも、iPhoneとかハンディカムで撮る場合はおそらく、60fpsなら1/60程度に

なっているはずで、フリッカーが出てしまう。


蛍光灯なんか使うなという話で済めばよいのだけど、そうもいかないからね。


30fpsで撮ればまだましになるっぽい?

フォントの難しさ

未だに克服できていない。圧倒的にセンスがない。

テロップ(Premiere Proで言うところの「タイトル」)で悩むのは主に3つ

  • フォントの書体
  • 背景と馴染む色使い
  • 縁取り、影

本当は、こういう背景であればこういう色のテロップを使えっていう

セオリー?みたいなのがあると思うんだけど、

まだ全然つかめてないんだよなあ。


数年前から、卒業生へのビデオレターという、ほとんどテロップ芸のような

動画を作り続けているけれども、

毎年ポリシーがブレブレなのと、上映してみたら意外と微妙だったりして

自分の中での正解がつかめずに今です。


バラエティ番組とか、ドキュメンタリーとかしっかり見て

学ばないといけないなあという最近でした。


Premiere ProとAfter Effects


その違いは何なの?とは昔から思っていて、

  • それらを一つの映像にまとめるのがPremiere Pro

という認識だったのだけれども、

Premiere Proでも動画にエフェクト掛けられるし、

テロップも出せるしなあと思っていた。



ただ、今回わかったのが、

テロップのアニメーションはAfter Effectsじゃないとできない!(今更!!)

他の動画編集ソフトでボタン一つでとかでできる、

「それっぽいテロップ」とか、パワポのアニメーションみたいな効果は

Premiere Proではできないんですね。

字幕しか使ったことなかったから気付かなかった。



だから、今の認識としては

  • テロップにアニメーションをつけられるのがAfter Effects
  • つけられないのがPremiere Pro

という感じ。暴言にも程がある…




ただPremiere Proの神的機能として、マルチカメラというのがあります。

たくさんの素材を並べておいて、9分割とかで並んだ画面を見ながら、

逐一カメラを選択して切り替えていき、一本の動画にできるというやつ。


今回の恋ダンスビデオでは、サビで多用させてもらいました。

あと間奏のダンスでも重宝しました。



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マルチカメラ編集中の図


もちろんこの機能使わなくても、全部を別トラックに並べておいて、

適当なところでバラバラに切り刻んで、必要なクリップだけ残して他を消せば

同じことはできるのだけど(実際、余裕が無いときはその方法を使ったりした)、

「マルチトラック」という1つのサブシーケンスとして保持しておけるのが

管理の点からもとても便利。



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ラスサビの9分割。

構想中の比較的当初からやりたかったけど、これくらいになるとマルチカメラは使えない。

各素材を手作業で縮小・配置して、時間を合わせて並べていく。


気の遠くなる作業だけど、素材もたくさんあったし、出来上がってる感が強くて楽しくやれた。


DVDに書き出すという闇

こんなに闇を感じたことは無かった。


通常のDVD-Videoというのは思った以上に画質が悪い。480pで30fps。

編集はすべて720pの60fpsで作っていたのでかなりのダウンスケール。

できることならもっと高画質で上映したい。でも式場にはDVDで持ち込むのが普通かつ信頼性が高い。


調べてみると、巷にはハイビジョン(AVCHD形式)映像をDVDに書き込むことができて、

通常のDVDプレーヤーでは観れないけど、家庭用ビデオコンポなどのブルーレイ対応の

プレーヤーだったら観られるらしい。なんじゃそりゃ。


まあでもそれはよかった。式場のプレーヤーが古いものでなければ、

その形式のDVDを持っていけば、編集と同じ720pでの動画が再生できる。と思った。

しかしそこからが面倒だった。


さて書き出すぞとなっても、なんとAdobeのソフトではDVDオーサリングができない。
(オーサリングは、DVDにただ書き込むだけでなく、DVDプレーヤーで観られるように書き込むこと)

昔、Encoreというソフトがあった気がしたんだけど、CCになってから消滅したみたい。

フリーソフトでは、うっかりすると試用版で、透かしが入ったりする。

悪態をつきながら、インストール・アンインストールを繰り返す深夜であった。



少し探して、通常のDVD-Video(低画質)であれば、書き込めるソフトを見つけた。


WinX DVD Author
https://www.winxdvd.com/dvd-author/index-jp.htm



一方でAVCHDの方は、かなりいろいろ試した結果、普段Sonyのハンディカムで

撮った動画の管理をしている、Play Memories Home(PMH)というソフトで書き込める様子。

本当に色々無料ソフトを探しても無くて、有料ソフトを買おうかと

クレジットカード番号を記入しているときに思いついた。


ただし、どんな形式で出力しても、「この形式の動画は対応していません」と言われる始末。


そこで、

編集した動画をH.264のmp4形式で書き出し

PMHのトリミング機能で、何も編集せずに再変換だけする

ことで、何故かハイビジョン映像書き込みに対応させることができた。



もちろん、今日びDVDなんて媒体に書き込むなんて状況になる人がほぼいないのはわかる。

でも結婚式の余興動画はDVDで持ち込むのが基本となっている現状なので、

どうにかならないものかという気持ちになりました。


確かに他人のPC上で動画が再生できる/できないという問題はさらに闇が深くて、

式場側が、すべての動画を再生する責任を負いたくない気持ちは非常にわかるんだけど。


時代の最先端をいった動画共有の方法はどうやっているのか、非常に気になる。

誰か知ってる人、情報ください。


写真から動画へ。次の課題は音声

普段の守備範囲である写真から映像になって、1秒間に60枚もの画像情報を扱うことになるので、

まずはそこが最初の難関だった。

ただ画角と露光と色だけでなく、時間軸を増やした

「動き」を表現することの難しさが動画作成にはあります。



そしてさらにもう一歩、音。

これに関しては、今回は妥協してしまった。


本編は、音声についてはCD音源を流しておけば良いので完全に甘えることができた。

ただメイキングは色々なカメラで撮った映像の音を使っているので、ゲインとかレンジとかがバラバラ。

平均だけ見てゲイン調整してしまうと、どこかでクリッピングを起こしてしまう。

例えばフォーカス駆動の音が意外と高周波で扱いにくかったり、

ドラムの演奏の音が入るとすぐサチってしまったり。



なので今回は、ヤバそうなところだけコンプとリミッターかけて済ませることにした。
(メイキングはそれでなくても書き出しが当日に間に合うかどうかのギリギリだったので)


本当は1クリップずつゲインを合わせて、EQかけて、しっかりマスタリングすべきなんだけど。

セリフとかが入らない分、そこは手を抜く形になった。

次回動画を作ることがあれば、音声にまでちゃんと配慮したものを作りたいなと思ってます。



最後に

当日めっちゃウケて嬉しかったし、今でも再生数が伸びているので嬉しいです。

一般公開はしてない、本編+メイキングの映像も載せておきます。



今後も頑張りたいと思います。